RIDING-HIGHの乱(その1)
“まつろわぬバイク乗り”たち『RIDING-HIGH』の叛乱の伝説(Vol.01)
その昔、バイク乗りたちの戦(いくさ)がありました……。
■あの狼煙(のろし)を見たかい?
旧くからのバイク乗りの皆さんならば、きっと覚えていらっしゃる方もおられるかとは思います。それは“その昔”といっても今から約30年前の出来事になります。
オートバイの高速道路料金が、まだ「29人乗りのマイクロバスと同額料金」だった時代に、あまりの不公平さに憤り、是正を求めて軽自動車枠の新設とそこへのバイク料金の落とし込みを法廷闘争で勝ち取った集団がありました。
現在の料金体系は(はなはだまだまだ不満はありますが)この闘いの結実だと思います。
それは『バイク差別と闘うライディング・ハイ連絡会(通称:ライディング・ハイ)』という全国各地のバイク乗りによる果敢な挑戦でした。
狼煙が上がったのは1983年11月21日付の読売新聞の紙面でした。
そこには「二輪車決起」「高速道路料金高すぎるョ」「一万人集め『普通車の半分でいいはず』と」「払い過ぎ返還訴訟へ」という刺激的な見出しが躍っていました。
これは司法記者クラブ内でも読売新聞記者のスッパ抜きのスクープでした。
無論、この記事に至るまでには水面下で闘いに向けた準備は着々と進んでいました。
バイクの高速料金を下げる為にはその方法論を巡ってバイク乗りでもある弁護団との協議も進めてきました。
これまでも同問題では4メーカーや2輪業界団体等々が様々な陳情請願や署名活動を行っていたとは思いますが、お役所や日本道路公団(当時)がそう易々と料金値下げに応じてくれる筈もありませんでした。時代劇でよくみる「お代官様お願いしますだ」の光景だったのでしょうね。
そこで思いついたのが、民主主義のルールに乗っ取って、この問題を法廷という公の場に持ち込み「可視化させる」ことで、バイクに無関係な人々にも訴えかけて世論喚起を図ることでした。願わくば、世論の支持をバックに道路行政そのものにまで切り込んでいければと考えていました。
そもそも社会資本である道路は本来無料であって然るべきだろうくらいの大前提です。
その為に提起したのが「払い過ぎ高速料金1万人返還訴訟」で、バイクで高速道路を走った経験のある方なら誰でも「原告」として参加できる方法でした。
合言葉は「高すぎるぜバイクの高速料金!」と単純明快なものだった記憶があります。
集団訴訟(マンモス訴訟)を選択した段階で脳裏を掠めたのは公害訴訟や薬害訴訟、航空機の騒音訴訟、投資被害訴訟、新幹線の乗車料金の在来線との差額を巡る集団訴訟のことでした。
当時200万人とも300万人とも言われたバイク人口が仮にこの原告団の列に加わってくれれば、それだけでも日本の裁判史に残る大事件になる筈でした。
しかし最初から「徒手空拳」「蟷螂の斧」の闘いを強いられるのは百も承知のことでした。
初期メンバーは「3人(が)腹を括ればなんとかなる」と集まるとよく笑いあっていたものです。
闘いは大らかで楽しくなければ勝てません。
僕らは退屈しているヒマなんてなかったのです。
最近にわかに某バイク雑誌誌上でバイクの高速料金が半額になるという話題がアナウンスされています。国会議員や業界団体を巻き込んだ署名活動が近々大々的にスタートする模様です。料金の値下げ自体は歓迎すべきことですよね。
しかし約30年にも現在に至る取り組みが成されていたことも書き留めておきたいと思いました。
当時の資料は散逸してしまって手元に残っているものは僅かなものではありますが、時間軸に捉われず思いつくままに微かな記憶の範囲を辿りながらゆるゆるとお伝えしていきたいと思っています。【文責】小池延幸