たまりば

車・バイク・乗り物 車・バイク・乗り物その他 その他


まつろわぬバイク乗り『RIDING-HIGH』の伝説(Vol.02)


まつろわぬバイク乗り『RIDING-HIGH』の伝説(Vol.02)



昭和な僕らの時代には誰かに情報を伝えたくても、現在のように携帯電話どころかスマホもインターネットもSNSも便利な情報伝達ツールも方法もありませんでした。
頼みの綱はマスメディアと口コミや地道なビラ(フライヤー)撒き活動とバイク雑誌程度のものでした。

30年以上も過去の出来後なので、資料も散逸してしまって汚いコピーが手元に残っているだけなので、下記に取り敢えずシコシコと文字起こしを試みています。(誤字脱字があったらゴメンね)
当時24歳だった僕も既に初老に差し掛かりつつある年域(ちなみに今月で58歳に突入します)に達しつつあり、当時の仲間の中には残念なことに既に鬼籍に入られた方もいて、そろそろ何か昔話であっても何処かに軌跡を残しておかないとヤバいかなと思いました。

何時か、日本のバイク乗りたちの歴史の中で≪ライディング・ハイの乱≫とでも位置づけられるような評価が成されれば頑張った甲斐とか、当時の悪戦苦闘と試行錯誤なり模索といった苦労が少しでも報われるという気もします。
だからご自由にどんどんシェアでもして1人でも多くのバイク仲間に「俺達はまだ生まれてもいなくてそんなこと知らなかったけれど、昔はこんな無茶な闘いに挑んだ連中が存在したんだ」とでもお伝えください。
何時か路上で!!!
【文責】小池延幸/ZRX1200DAEG


【出典】読売新聞 
昭和58年(1983年)11月21日(月曜日)

▼2輪車決起/「高速道路料金高すぎるョ」/一万人集め「普通車の半分でいいはず」と/払い過ぎ返還訴訟へ/「業務が煩雑化」建設省・公団は反論

「高速道路の二輪車料金が、普通車と同じというのは高すぎる。普通車の半分でいいはず」----と、現行の料金体系に抗議する“まじめライダー”たちが、建設省と日本道路公団を相手に“払い過ぎ料金”の返還を求める民事訴訟を行うことになり、二十日までに、集団訴訟のための連絡会を結成した。賛同者一万人を集めて訴訟に踏み切るというが、本当のねらいは、「二輪車」の別枠料金を設けてほしいという一本立ちの要求。建設省、公団側では「料金徴収業務が煩雑化する」と、料金改定の意思はなく訴訟には受けて立つ構え。普通車側から見れば、高速道路上で二輪車と接触しそうになってヒヤリとした経験を持つ人も少なくないだけに、安全上からも反対の声が上がりそう。最近の二輪車ブームの中でのこの動き、賛否両論の波紋を広げそうだ。

この会は「バイク差別と闘うライディングハイ連絡会」=小池延幸事務局長(二四)=。
バイクが大好きだが暴走族ではない、という二十代から四十代までの会社員や学生、弁護士、雑誌編集者、ジャズ歌手ら“まじめライダー”十数人が集まって今月十八日に結成された。料金問題をはじめ、二人乗り禁止や速度制限など、高速道路でのバイクに対するさまざまな差別をなくしていこうというのが目的で、一番身近な料金問題について集団訴訟の形で社会にアピールしていくことになった。一万人訴訟という数字上のハードルを自ら設けたのも、それだけの賛同者があれば社会的な支持を得られたと判断してもいいのではないかとみたからだという。
 具体的な集団訴訟の手続きについて同会では、趣旨に賛同するライダーの委任状のほか免許証や車検証、高速道路料金の領収書などのコピーと、訴訟費用として一口千円程度を送ってもらうことを考えており、会報やバイク専門誌などを通じて、ライダー仲間に呼びかけ、一万人の申し込みが集まった時点で訴訟に持ち込むことにしている。“過払い金”の額については他の車両との重量比や定員比などのほか、外国の実態とも比較して今後、具体的に算定していくことにしているが、現在のところ現行料金の半額程度をメドにしている。
 高速道路料金は「普通車」(総重量八トン未満のトラックや乗客定員二十九人以下のマイクロバスを含む)、「大型車」(同八トン以上のトラック、路線バス)、「特大車」(同二十トン以上のトラック、四軸以上のトレーラーなど)の三区分になっており、バイク(高速道路を走れるのは125cc以上)は「普通車」扱い。
 同会の小池事務局長は「バイクは高速道路では一人乗りしか認められていないのに、二十九人まで乗れるマイクロバスや何十倍も重いトラックと同一料金なのは理解できない。建設省などは事務が煩雑になるというけれど、軽自動車と普通自動車の区分なら面倒でも、二輪と四輪だったら一目でわかるはず。二輪車に対する行政側の差別としか思えない」と話す。
 また、この問題をバイク専門誌で追及している同会メンバーのフリージャーナリスト、牧園厚さん(三四)は「欧米では高速道路でも二人乗りを禁止しているところはなく、しかもバイク料金を別区分にしている国も多い。行政側の本音はバイクに走ってもらいたくないということなのだろうが、なぜバイクだけ目の敵にされるのか」と話している。
 これに対し、建設省高速道路課では「高速走行の際はバイクも一台の自動車と同様の車間距離が必要で、道路の占有スペースからすれば同じこと。しかも車の区分を細かくすれば料金徴収業務が煩雑化し、結果的に料金にはね返ってくる」(野村和正・建設専門官)としている。日本道路公団でも「道路の損傷という点からすれば重量ごとに区分するのも一つの考えだろうが、あまり区分が多いと料金徴収に時間がかかり、利用者へのサービスも低下する。しかも高速道路をどんどんバイクに走られても危険だ。また、バイクだけ別枠にすると、軽自動車やトラックからも同じ要望が相次ぐだろうし……」(前田慎一・業務企画課長代理)といい、料金区分を変える気配は全く見せていない。

写真キャプション/「普通車」の料金を払うバイク・ライダー

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

今になって改めて読み返してみても「料金徴収業務が煩雑化する」なんて相手側の言い訳は怠慢そのもので、お金を取る側の都合を優先していて笑えました。(現場の徴収係の労働者の皆さんの苦労はわかりますけどね)

これはライディング・ハイ連絡会の狙いすました旗揚げ記事でしたが、後日「読売新聞」にこんな「申入書」を行っていたのも併記しておきます。

■申入書 
1.本年11月21日付貴紙朝刊に「二輪車決起」という記事が掲載され当会の発足について、報道されました。
二輪の不当な高速料金問題を広く、世の人々に問いかけてゆこうとしている当会にとっては、この報道は歓迎すべきものとして受けとめております。
2.しかしながら、記事のなかに当会が「暴走族」ではなく、「まじめライダー」の集団であるという部分がありましたが、この様な表現の仕方は、当会の基本理念が多くの人々に誤解されるおそれがあり、当会としては看過することができません。
 当会は、不当なバイク差別と闘う、という一点でのみ一致できるすべての人々を受け入れる会です。ライダーを「まじめライダー」とか「暴走族」とかに区分することは、バイク差別の延長であると考えております。
3.以上の通りでありますから、当会が「まじめライダー」だけの会ではなく、バイク差別と闘うという一点で一致できるすべての人々を受け入れる会である旨の訂正記事を貴紙に掲載されることを本書面において申し入れます。
昭和58年11月28日
バイク差別と闘うライディング・ハイ連絡会事務局 事務局長 小池延幸
読売新聞社社会部殿


■あの狼煙(のろし)を見たかい?

旧くからのバイク乗りの皆さんならば、きっと覚えていらっしゃる方もおられるかとは思います。それは“その昔”といっても今から約30年前の出来事になります。
オートバイの高速道路料金が、まだ「29人乗りのマイクロバスと同額料金」だった時代に、あまりの不公平さに憤り、是正を求めて軽自動車枠の新設とそこへのバイク料金の落とし込みを法廷闘争で勝ち取った集団がありました。
現在の料金体系は(はなはだまだまだ不満はありますが)この闘いの結実だと思います。

それは『バイク差別と闘うライディング・ハイ連絡会(通称:ライディング・ハイ)』という全国各地のバイク乗りによる果敢な挑戦でした。

狼煙が上がったのは1983年11月21日付の読売新聞の紙面でした。
そこには「二輪車決起」「高速道路料金高すぎるョ」「一万人集め『普通車の半分でいいはず』と」「払い過ぎ返還訴訟へ」という刺激的な見出しが躍っていました。
これは司法記者クラブ内でも読売新聞記者のスッパ抜きのスクープでした。

無論、この記事に至るまでには水面下で闘いに向けた準備は着々と進んでいました。
バイクの高速料金を下げる為にはその方法論を巡ってバイク乗りでもある弁護団との協議も進めてきました。
これまでも同問題では4メーカーや2輪業界団体等々が様々な陳情請願や署名活動を行っていたとは思いますが、お役所や日本道路公団(当時)がそう易々と料金値下げに応じてくれる筈もありませんでした。時代劇でよくみる「お代官様お願いしますだ」の光景だったのでしょうね。

そこで思いついたのが、民主主義のルールに乗っ取って、この問題を法廷という公の場に持ち込み「可視化させる」ことで、バイクに無関係な人々にも訴えかけて世論喚起を図ることでした。願わくば、世論の支持をバックに道路行政そのものにまで切り込んでいければと考えていました。
そもそも社会資本である道路は本来無料であって然るべきだろうくらいの大前提です。
その為に提起したのが「払い過ぎ高速料金1万人返還訴訟」で、バイクで高速道路を走った経験のある方なら誰でも「原告」として参加できる方法でした。
合言葉は「高すぎるぜバイクの高速料金!」と単純明快なものだった記憶があります。

集団訴訟(マンモス訴訟)を選択した段階で脳裏を掠めたのは公害訴訟や薬害訴訟、航空機の騒音訴訟、投資被害訴訟、新幹線の乗車料金の在来線との差額を巡る集団訴訟のことでした。
当時200万人とも300万人とも言われたバイク人口が仮にこの原告団の列に加わってくれれば、それだけでも日本の裁判史に残る大事件になる筈でした。

しかし最初から「徒手空拳」「蟷螂の斧」の闘いを強いられるのは百も承知のことでした。
初期メンバーは「3人(が)腹を括ればなんとかなる」と集まるとよく笑いあっていたものです。
闘いは大らかで楽しくなければ勝てません。
僕らは退屈しているヒマなんてなかったのです。

最近にわかに某バイク雑誌誌上でバイクの高速料金が半額になるという話題がアナウンスされています。国会議員や業界団体を巻き込んだ署名活動が近々大々的にスタートする模様です。料金の値下げ自体は歓迎すべきことですよね。
しかし約30年にも現在に至る取り組みが成されていたことも書き留めておきたいと思いました。
当時の資料は散逸してしまって手元に残っているものは僅かなものではありますが、時間軸に捉われず思いつくままに微かな記憶の範囲を辿りながらゆるゆるとお伝えしていきたいと思っています。【文責】小池延幸