たまりば

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心に「内なる荒野」と「外なる荒野」を抱えての幻視。

心に「内なる荒野」と「外なる荒野」を抱えての幻視。

心に「内なる荒野」と「外なる荒野」を抱えての幻視。


ここに1枚の写真があります。
トーハツランペットの50ccと思われるマシンをチョッパースタイルに改造して跨る男性の猛々しいまでの姿です。
あまりに疾走感のある写真に、僕はずっと曲乗りでもしているのか、それとも走りながら何かに怒りでもぶつけるように走りながらマシンを踏みつけてでもいるのかと思ってきました。
ところが、どうもエンジンをかける為にキックレバーを踏み抜くシーンだったようです。
それにしても、まるで流し撮りのような背景や、水平でもない地平線など、そしてまるで少し傾いたかのような電信柱と広大で荒涼とした風景や、そこに一直線に延びるダートっぽくも見える路面の予感や、これがどちらかというと夕方から夜へのシーンというよりは、なんとなく夜中から明け方への時間帯のシーンとも思えますが、とにかく疾走感が拭えない迫力の1枚です。
“道を(バイク)で往く者”の1人としては、気になるどころかある時代の空気感や若さの普遍性を反映した見過ごせない1枚です。

音楽好きの方であれば、後に振り返ると特定のアーテイストのデビューアルバムの中にその後のアルバムに散見できる要素が案外と散りばめられていたことに気がつくような経験をしたことがあると思います。
故に鮮烈なデビューアルバムに捨て難い魅力を感じたり、案外とベストアルバムとして挙げることってありますよね。

その意味では巨匠たる写真家の若き日の原点たる習作の中に、その作家の全てといってもいいかもしれないくらいの情念や個性や熱が宿っていたとしても不思議ではない気もします。

前述の写真は1967~78年頃の撮影と写真集『感性のバケモノになりたい』にはクレジットされていました。写真家・十文字美信さんが20~21歳頃の作品だそうです。
尚、この写真の日の衝撃の結末は、現在神奈川県鎌倉で開催中の写真展≪「修羅」失われた記憶≫でご覧ください。

同写真集の当時(2007年)の今となっては貴重なプレスリリースを一部抜粋でご紹介しておきます。

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新刊のご案内
感性のバケモノになりたい 十文字美信 写真

MOMAに展示された処女作≪首なし≫から「暴力写真家」の異名を冠されたグラビアヌード
20代の未発表作品、伝説の実験的試み、そして国宝から60歳の最新作まで、40年・全26テーマ・272点を収録。
十文字美信のバケモノざまを堪能する最高濃度の写真集、初の大集成、遂に敢行。
著者書き下ろし、写真人生論「見えないものについて」(400字×100枚)収録

≪内容≫
1970年代の広告写真に強烈な時代的名作の数々を残しながら、その枠にとどまることなく圧倒的技術力と感性により、縦横無尽に写真表現の可能性を展開し続ける十文字美信。

ハワイ日系一世を10年間取材した『蘭の船』(81年、伊東信男賞)や、日本伝統文化を「黄金」という切り口で見せた『黄金 天風人』(90年、土門拳賞)、3Dインスタレーション『黄金浄土』がボストン美術館で公開されるなど、国内外で高い評価を得ながら、あまりに広いジャンルと深い造詣により、写真界では異端的な存在とされてきました。

本書は、はじめてカメラを手に、何かをつかもうとあがいていた20代の実験的試みの数々から、処女作品がニューヨーク近代美術館に並ぶという鮮烈なデビューを飾った「Untitled」≪首なし≫、異色ヌードの≪暴力写真家と呼ばれて≫、そして自殺体験を視覚化した≪グッドバイ≫、ミノクッスによる≪グランドギャニオン≫などの実験的な試みから、60歳の最新作の撮下ろしまで、未発表作品を含む、全26テーマ・272点により十文字美信40年の軌跡を一堂に展開し、創作の通底にある「見えないものを写す」という世界を体感できる構成になっています。

著者書き下ろし写真論「見えないものについて」では、あまりに超人的な創作力を支える思考の謎の一端にふれつつ、そして、悩み苦しみながら、写真が自分から離れなかったという、人生論としても圧巻です。

「感性のバケモノになりたい」と、常に感性を研ぎ澄まし写真に挑み続ける十文字美信の“創作の源泉”を伝える本書は、「写真表現の可能性と表現の喜び」を伝える一書として、未来の表現者世界をはじめ、同世代へのエールとしても、広く支持されることを期待しております。

〇仕様(省略)
〇刊行記念展が開催されます(省略)

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感性の摩滅したような(元々希薄かも?)凡人に過ぎない僕が語るべきことではありませんが、もしかすると十文字さんは最近更に「記憶」について改めて深く考察しているような気がします。
この写真集の「あとがきにかえて」の中でも「過去について考えた。記憶ということも考えさせられた」と20代の頃に撮影して、それっきり忘れていたかのような膨大な写真との邂逅を語っておられました。
「写真を見て蘇った感覚は、思い出という深い想いの底から浮かび上がったにしては、あまりにも具体的で生々しい。その生々しさは、過去という時間の堆積から『一瞬』を抜き出して見せつけられたからだろう。」と記しておられますが、書下ろし写真論の中でも「だから、これらの写真は今見ても郷愁とは違う、古いくせに沸騰したばかりの湯のような生々しい温度を感じてしまう」と語っておられました。
そんな写真だから、当時の若者たちが置かれた時代背景も、被写体も撮影者とも縁遠い私ではあっても、今も生々しく迫ってくるだけの強度を持ち続けていました。
平たくいえば「なんなんだぁ~、一体この人達は・・・。誰も考えつかんようなムチャクチャ面白いことやってるじゃん」というのが正直な感想です。

昨年、盟友の「藤崎」氏を亡くしたことで、「十文字」氏が哀しみと懐かしさの入り交ざったような複雑な感情の中で紡いだ思いが取らせた「何か」なのか「何となく」なのかの正体でも探るかのような旅の記録も含めての写真展が今回の展示だったのかもしれません。
その辺の詳しいことは興味がありましたら下記のサイトにある十文字先生の「ご挨拶」や直接ギャラリーを訪問してみるのが得策かなとは思います。
とはいえ、先日鎌倉にある先生のギャラリーを訪問してきた私ではありますが、作品から何かをしっかり掴みとったり感じられたかと問われると、凡人故の悲しさで甚だ疑問ではあります。
でも、何か新しい「扉」の前に立つことが許されたような気だけはしています。叩けば、もしかすると新しい「扉」が開くような幸運もあるのかも知れませんよね。
いずれにしても、何か自ら行動を起こすという大袈裟なものではなくても、直接訪問して目撃してみて感じることは常に大事な姿勢なんだとは思います。
物事ってそこからしか始まらないものだと思いません?
ネットの仮想空間の中と人間同士の生身の出会いとは決定的にリアルさも質も違いますもんね。

おっと、『感性のバケモノになりたい』の版元の「求龍堂」って、“知の巨人”松岡正剛さんの大作『先夜千冊』の出版社でしたし、そもそもこの本の宇宙みたいなセットで巻頭写真を撮られていたのも十文字美信さんでした。

心に「内なる荒野」と「外なる荒野」を抱えての幻視。


心に「内なる荒野」と「外なる荒野」を抱えての幻視。


心に「内なる荒野」と「外なる荒野」を抱えての幻視。


心に「内なる荒野」と「外なる荒野」を抱えての幻視。


心に「内なる荒野」と「外なる荒野」を抱えての幻視。


▼写真家・十文字美信ブログ 写真と珈琲のバラード(41)
https://jumonjibishin.com/ja/2018/04/15/the-ballad-of-photo-and-coffee-41/#more-5213
http://galleryb.jp/ja/collections/fujisaki/#3

BISHIN JUMONJI GALLERY
十文字美信写真展:「修羅」失われた記憶
会期:2018/5/23(水)~6/25(月) 11:30~18:30 火曜休廊
〒248-0005 鎌倉市雪ノ下1-7-22
0467-61-3755

▼写真集『感性のバケモノになりたい』十文字美信:2007年/求龍堂
http://www.kyuryudo.co.jp/shop/shopdetail.html?brandcode=050000000049&search=%BD%BD%CA%B8%BB%FA&sort=


▼1109夜『澄み透った闇』十文字美信|松岡正剛の千夜千冊
http://1000ya.isis.ne.jp/1109.html

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