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『まつろわぬ民2018』感想文?(その1)・・・(その2)は未定(笑)

『まつろわぬ民2018』感想文?(その1)・・・(その2)は未定(笑)

≪胆沢すえ≫と≪大木よね≫という2つの記号

『まつろわぬ民2018』感想文?(その1)・・・(その2)は未定(笑)


演劇集団・風煉ダンス公演の音楽劇『まつろわぬ民2018』を観ていて僕の頭に去来した1人の女性の名前がありました。
主演女優・白崎映美さんの役名は「胆沢すえ」という名前の老婆でした。
「胆沢」は地名でもあり、かつて「阿弖流為」(アテルイ)の本拠地ともされた現在の岩手県奥州市にあたります。朝廷から侵略を受けた「蝦夷」(えみし)と呼ばれた東国の人々を題材にした本作の鬼才劇作家・林周一さんはここを強固に踏まえていたと思います。

一方、僕の脳裏を横切った「大木よね」という名前は、成田新国際空港建設を巡る三里塚闘争で登場する名前です。住んでいた集落の地名から“取香(とっこう)の婆”と呼ばれていた方です。

芝居では「胆沢すえ」の暮らす「ゴミ屋敷」の行政による破壊が語られます。
片や1971年9月20日午前11時40分、第二次強制代執行の過程で「大木よね」の住む家が機動隊と公団職員、県の職員らによって襲われます。家といっても裕福な大農家の多い取香部落では貧農に類するよねさんの家は僅か四坪ほどのもので、そもそも小屋を改造したものだったらしく窓も皆無に近いものだったとされます。屋根はあったにせよ炊事場だって外で、風呂や便所だって別だったそうです。
しかし暮らしも構えも貧しくとも彼女にとって掛けがえのない大切な「住み家」です。
そこに殺到した屈強な警察機動隊員たちは、脱穀機にしがみつく老婆を引きはがし押し倒します。完全武装した乱闘服姿の濃紺の波に呑み込まれながら、白髪を振り乱して、首でも絞められているかのような苦痛の表情を浮かべながらも必死に抵抗する老婆の写真を学生時代に見た記憶があります。

記憶は定かではありませんが、あの写真は「朝日ジャーナル」か、写真家の福島菊次郎さんの『戦場からの報告~三里塚1967-1977』(社会評論社/1977年)だったようにも思えます。
あの空港が「血塗られた空港」と呼ばれる所以が克明に記録されています。
そこに暮らし続けたいとささやかに願う1人の老婆の「基本的人権」を、国際空港建設という「公共の福祉」が暴力的に蹂躙した戦後史の暗部の瞬間でした。
僕はその1枚の写真に「なんなんだよ、日本国憲法で保障された崇高な理念が国家権力によって土足で踏みにじられているじゃないか」と激しい憤りに駆られた記憶があります。
国家権力とは時に剥き出しの暴力装置を発動してでも、1人の老婆の人権を躊躇なく平気で踏みにじるものなのです。それもまた国家権力の持つ本質です。
思えば僕が学生時代に最初に三里塚に「援濃」に入った農家は、大木よねさんと養子縁組をされた小泉夫婦のお宅でした。
そういえば、自民党の憲法改正案では「公共の福祉」が「公益及び公の秩序」と
いう更に曖昧な概念にされていることに限りなく不安を感じます。

よねさんの家は僅か30分程で、パワーショベルによって圧し潰されたと報道にありました。
芝居の話に戻すと、「ゴミ屋敷」も終盤で強制代執行に襲われます。
邪悪で禍々しいばかりのモノが轟音とスモークとともに舞台に乱入します。

そいつはティラノザウルスのような狂暴な大きな口を開けて、鎌首を振り回し鬼一族を次々に葬っていきます。そう、あの「ユンボ」というか「油圧」じゃなくて「人力」の「パワーショベル」です。運転するのはお役所関連の業者の人達や政治家です。
このシーンで僕の脳裏に再び蘇った映像がありました。
山形国際ドキュメンタリー国際映画祭の立ち上げに尽力したドキュメンタリー映画監督の小川伸介さんの一連の「三里塚シリーズ」の中の『三里塚 第二砦の人々』(小川プロ/1971年)です。僕が大学浪人時代に観た映画です。
1971年2月、千葉県と空港公団は「土地収用法」を盾に強制代執行に乗り出します。農民たちは子供から老人まで家族ぐるみで6ヵ所に「砦」を築き立てこもり抵抗します。
既に森は破壊され、土が剥き出しになった泥水でゆかるんだ北総台地の中にポツンポツンと「砦」が築かれていました。
そこに公団から日当2万円で雇われた臨時職員たちが重機で迫ります。本来なら心を通わせ手を結ぶべき下層労働者たちと農民たちが激しく衝突します。
悲しい構図でした。この構図は劇中の「ゴミ屋敷」の撤去を仕事として請け負う業者のそれと似ていました。
鎌首をもたげて「第二砦」に迫り、メリメリと音を立ててバリケードを破壊し、遂には子供たちが隠れた小屋に迫るユンボの姿は、音楽劇『まつろわぬ民2018』の後半の象徴的なシーンと被りました。
「第二砦」が破壊されても、農民たちは泥でゆかるむ大地に再び砦を修復して次の攻撃に備えていました。まるで「砦」そのものが生きているかのようでした。余談ですが、よねさんは「第三砦」で奮戦していたそうです。
劇の冒頭でも「強制収容」「強制代執行」みたいなお堅い法律用語が台詞として飛びかっていた気がします。

「大木よね」さんが第二次強制代執行直前の1971年8月31日に発した「せんとうせんげん」があります。
「みなさま、こんどはおらがじしょといえがかかるので、おらはいっしょうけんめいがんばります。こうだんやせいふのいぬらがきたら、おらは、はかばとともにブルトーザーのしたになってでも、クソぶくろとみのさんがのこしていったかたなでたたかいます。(以下省略)」
よねさんはいつも「おらぁ、がんばるだ!」の一言しか発しない方だったと言われています。その姿は「オラがたは結してまつろわねぇ~!」と雄々しく叫ぶ「胆沢すえ」の天晴な姿と激しく被り、暗がりの客席の中の僕に迫ってきました。その時、僕にはあの「ゴミ屋敷」があの時の「第二砦」に見えてどうにも仕方なかったのです。
それは今の「沖縄」の辺野古や高江が直面している問題と、そこで座り込みを続ける方々の姿と僕の中では間違いなくつながっていました。
もしも林周一さんという劇作家が「胆沢すえ」という名前の中に「大木よね」という記号を埋め込んでいたとしたらと妄想して頭の中で一人遊びしてみました。
(続く?)

▼音楽劇『まつろわぬ民2018』三都市(東京・酒田・八戸)
連続公演(演劇集団 風煉ダンス)特設サイト
https://alafura6.wixsite.com/furendance

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▼デーリー東北 2018年12月7日(金) 新聞コラム『天鐘』
http://www.daily-tohoku.co.jp/tensho/tensho.html
『天鐘』(10月7日)
 歴史の中には、教科書に記述されない出来事と人物が多い。勝者と時の権力者が存在を消し去ろうとしたからでもある。忘却の彼方に追いやられた者は、どれだけいたのだろう▼古代、中央政権から見た東方には「まつろわぬ人ども」と呼ばれる民がいたという。野蛮で文化も遅れている―。中央によって歪(ゆが)められたイメージを作られた「蝦夷(えみし)」のことだとされ、平定の対象だった▼解釈には諸説あるが、東北地方の古代史研究者である高橋富雄氏は述べている。「エミシというのは、政治的に中央の命を奉じないし、その教化にも従うことのない勇猛な反抗者たちを指していた」(『蝦夷』吉川弘文館)▼東日本大震災の直後、八戸市出身の作家木村友祐さんが書き上げた『イサの氾濫』は、現代の東北人を蝦夷に重ねた小説だ。国策である原発の事故で痛めつけられても、被災者は耐え続けて声を発せずにいる。木村さんは畳み掛けた。悔しさを、かつての蝦夷のように「叫べ!」と▼『イサ―』は、同じ東北人である歌手の白崎映美さんを触発する。深い共感から湧くように曲が生まれ、白崎さん主演の音楽劇「まつろわぬ民」が誕生した▼全ての原点は木村さんの東北への想(おも)い。きょうから、八戸市公民館で演劇集団「風煉(ふうれん)ダンス」の公演が行われる。作家の生まれた地で〝女蝦夷〟白崎さんが歌い叫ぶ。寡黙な人々が忘れ去られないように。

▼八戸マガジン『ユキパル 55』 2018年 12月号
目撃せよ!12月7・8日『まつろわぬ民2018』~特報!『まつろわぬ民2018』稽古場に参入!
http://www.ukipal.jp/web_paper/current-number/ukipal55/

▼デーリー東北
歌と芝居で東北エール 音楽劇「まつろわぬ民」開演(2018/12/08 09:00)
http://www.daily-tohoku.co.jp/kiji/201812080P227768.html

▼山形経済新聞 2018年11月26日付
山形・酒田市で音楽劇「まつろわぬ民2018」 白崎映美さん凱旋公演
https://yamagata.keizai.biz/headline/479/?fbclid=IwAR0NSeaTGnhXxsnuZ3ejvJfNRHa2pR5adT_N2vUZZIGnHQ83wsgbiRR4pAw

▼Yahoo!JAPANニュース 2018年11月13日付
風煉ダンスの“大スペクタクル音楽劇”「まつろわぬ民」2018年版が3都市で
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181113-00000019-natalies-ent

▼立川経済新聞 2018年11月11日付
たちかわ創造舎を拠点に活動する演劇集団「風煉ダンス」が「まつろわぬ民2018」を公演!
https://www.facebook.com/tachikawatimes/posts/1950959644957469?__xts__[0]=68.A

▼特別企画 テント芝居・野外劇の現在形
【劇評】『まつろわぬ民』風煉ダンス2017
東北百鬼夜行絵巻を 大江戸先住民が観る ~
平井玄 (批評家)
http://www.geocities.jp/azabubu/artissue/a11/011sp_hirai.html

▼図書新聞  2017年08月05日付
評者◆伊達政保
一人一人の胸の奥にある小さな火を燃やせ、援軍はあなたたち――演劇集団風煉ダンスの『まつろわぬ民2017』

http://toshoshimbun.jp/books_newspaper/week_description.php?shinbunno=3314&syosekino=10643&fbclid=IwAR37I-iwIi82NSMqV9Xg_r8XEplzAsqY4C6Rbh5la_fsFcPEq7HZN-_2vms


※【ネタバレ注意】「まつろわぬ民2018」 演劇・ミュージカル等のクチコミ情報 https://stage.corich.jp/stage/95740

▼白崎映美 新旧インフォメーションサイト
https://emishirasakinew.amebaownd.com/
http://emishirasaki.com/
https://www.facebook.com/emishirasaki
▼白崎映美&東北6県ろ~るショー!!
https://www.facebook.com/tohogu6/
▼フォトエッセイ『鬼うたひ』白崎映美著 亜紀書房
http://www.akishobo.com/book/detail.html?id=756

▼小説『イサの氾濫』木村友祐著/未來社
http://www.miraisha.co.jp/np/isbn/9784624601195
≪出典≫時事通信 2016年4月12日or15日付 [レビュアー]岡和田晃
木村友祐「イサの氾濫」書評「忘却拒否する魂の叫び」
「がんばれニッポンっ!」という空白を埋める
https://www.bookbang.jp/review/article/515309
▼木村友祐 https://www.facebook.com/yusuke.kimura.794


▼デーリー東北
歌と芝居で東北エール 音楽劇「まつろわぬ民」開演(2018/12/08 09:00)
http://www.daily-tohoku.co.jp/kiji/201812080P227768.html


 八戸市出身の作家木村友祐さんの小説「イサの氾濫」を原点とした音楽劇「まつろわぬ民」が7日、市公民館で初日を迎えた。山形県出身の歌手白崎映美さんら27人が出演。エネルギッシュな歌と芝居に乗せて、東日本大震災など多くの苦難を乗り越えた東北地方を応援するメッセージを投げ掛けた。8日まで。


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