たまりば

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2018年12月31日

冬休み読書♪

冬休み読書♪

大掃除めいた騒ぎも終わり、年賀状も取り敢えずの分は書き終えたので、晦日の夜に書斎で一息ついて“ツェッペリン”の「プレゼンス」を聴きまくっていたり、ELPの1972年の初来日公演のブート盤を聴いたり、ジョニ・ミッチェルを聴いたり、ジェフ・ベックの1999年の来日公演、気分転換で“デッド”をかけてみたり、72年と73年のデヴィッド・ボウイのライブ盤にチェンジしたり、挙句の果てにスージー・クアトロの1977年の日本公演まで引きずり出してきて休養中。

この『泥沼』という小説は10日程前に出たばかりの1冊です。
著者の陣野俊史さんは文芸批評家なのですが、12月18日付で小説家の星野智幸さんがFBで《文芸批評家、陣野俊史さんが、初の小説『泥海』(河出書房新社)を刊行した。これを読んで、陣野さんが本質的に小説家であることを、私は知った。何しろ、そこを書かねば今文学が存在する意味がない、という核心をいきなり突いた作品を書いたのだから。文学が消える時は、個人の内面が許されなくなる時である。このままではそれはもう間近に起こることだろうし、本当にその危機を感じて書いている書き手は少ないけれど、そこに強力に抵抗する書き手が登場してくれた!ぜひ読んでください。》と高く評価しているのを小説家の木村友祐さんが取り上げているのを見つけて、気になって入手してみました。詳しいことは星野智幸さんが下記のご自身のブログで取り上げています。

僕が陣野さんの著作を初めて読んだのは音楽評伝というか証言集『渋さ知らズ』(河出書房新社/2005年)だったのですが、アレで半ば人生観変わったというか嗜好も随分と影響されたからね。故に気になる作家さんの1人なのです。まだまだ読んでみたい作品があるんだよね。
その陣野さんの小説家としてのデビュー作が、この『泥海』というわけです。

▼星野智幸 言ってしまえばよかったのに日記 2018-05-02付
陣野俊史「泥海」を読む ―
http://hoshinot.asablo.jp/blog/2018/05/02/8840753

 きわめてガチな小説が登場した。文芸批評家、陣野俊史さんの初小説「泥海」(「文藝」2018年夏号)である。すごい攻めている。日本文学で空白に近くなっている部分に、いきなり切り込んでいる。つまり、こういう文学は、今の日本ではほとんど存在していない。本当は存在すべきなのに。
 シャルリー・エブド事件を、さまざまな実際の証言をもとに、実行犯及び実行犯の周辺の人たちの目線から、描く。そして、それを受容している日本の30代の青年の姿も描く。
 日本の書き手が、シャルリー・エブド実行犯を一人称で書くのは、相当な勇気の要ることだが、そこはずっとフランスの移民、特に北アフリカからのイスラム系の移民たちの姿を、ヒップホップやサッカーを通して追い続けてきた陣野さんだから、踏み込むことができたのだろう。フランス語の原資料等を綿密に踏まえていると思われる。そして、日本の書き手がその主題を書く動機、必然性も、長崎の干潟に生まれ育った青年を描くことで、徹底的に示されている。ここがつながっていることの実感こそが、この小説の重要なところだ。私はとりわけそこに感銘を受け、共感した。
 陣野さんのど真ん中の仕事と言ってよい。フランスの移民たちのマイナー性、その被差別性、そしてその抵抗文化としてのヒップホップとサッカー、反逆、革命、二項対立の欺瞞。そして長崎の置かれている位置、長崎の表象と現実。
 事件の実行犯の兄弟と、かれら周辺にいて心情を共有している移民たちが、いかに世から定型的に決めつけられて見られているか、その微細な差異を、この語りは読み手に感じさせていく。「あちら側」からの目で虚心坦懐に見ないかぎり、どうしたって見えない、曖昧な領域の感情までが見えてくる。
 これは「テロリスト」として洗脳されていくイスラム原理主義の若者たちの物語、ではない。追い詰められて選択肢をじわじわと失っていった者が、それでも自分を失うまいともがく中で、矛盾した暴力的な選択肢を、迷いとともに選ぶほかなくなる物語だ。事件を起こした側、起こされた側のどちらかを断罪する物語でもない。しかし、この世のあり方を強烈に批判している。
 読み終わって、ああ、陣野さんはすでに半ば小説を書いていたんだな、と感じる。『テロルの伝説 桐山襲烈伝』という渾身の批評作品は、じつはもはや半分、小説だった。陣野さんの文を通して、桐山襲の言葉を響かせるのが、あの作品だった。あの批評を書くようにして、しかしもっと踏み出して、あの事件に関わった者たちの声を響かせ、日本の未来なき青年の声を響かせ、「泥海」はできたのではないかと思う。
 本気で、言葉だけをもってして、この社会と闘っている小説の誕生である。

冬休み読書♪



▼『泥海』陣野俊史/河出書房新社 
http://ap27.eurotec.ne.jp/np/isbn/9784309027647/


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    Posted by 放課後倶楽部♪DX  at 06:54 │Comments(0)本棚

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